
こんにちは!「となりは中国人。」の僕です。
中国出身の妻と結婚が決まったとき、僕は「少しでも彼女のルーツを理解したい!」と、必死に中国語を勉強しました。NHKの語学番組を録画し、単語帳を作り、発音の練習に明け暮れる日々・・・・・・。
しかし、いざ一緒に暮らし始めてみると、僕が覚えた「你好(ニーハオ)」や「謝謝(シェシェ)」といった丁寧なフレーズを、彼女が家の中で使うことは一度もありませんでした。
代わりにわが家のリビングを朝から晩まで支配したのは、辞書の1ページ目には決して載っていない、でも中国の人たちの感情が120%詰まったあの響きでした・・・・・・。
「アイヨー!(哎哟!)」
今回は、日中夫婦歴10年の僕が、もはや日本語の「ヤバい!」以上に便利(?)だと確信している、生きた中国語のリアルと、その裏にあるコミュニケーションの本質をお届けします。
「アイヨー」は喜怒哀楽のすべてを支配する!
結婚当初、妻が連発する「アイヨー!」を聞くたびに、僕はびくびくしていました。
「えっ、何か怒らせたかな?」、「僕、何か壊しちゃいけないものを壊した?」と、彼女の顔色を伺う日々・・・・・・。
でも、10年という歳月をかけて彼女を観察し続けた結果、ようやく分かったことがあります。彼女たちにとっての「アイヨー」は、単なる驚きの言葉ではなく、「心のダムから感情が溢れ出したときのスイッチ」なのです。

日本語で言えば、「あらら💦」、「うわぁ💦」、「うそでしょ💦」、「なんてこった💦」といったすべてのニュアンスを、たった4文字でカバーしてしまいます。さらに面白いのは、その「音のトーン」だけで意味が劇的に変わることです。
【わが家のアイヨー活用辞典】
この「アイヨー」が表現する意味は、こんな感じにまとめてみました。
日本の「すみません」 vs 中国の「没関係(メイグァンシ)」
言葉の違いに戸惑う中で、僕が最も救われた経験があります。それは、日本人がつい口癖のように言ってしまう「すみません(ごめん)」に対する、妻の価値観の違いでした。
僕は典型的な日本人なので、ちょっとしたミスをしたり、妻の手を煩わせたりすると、反射的に「あ、ごめん、すみません」と言ってしまいます。しかし、ある日、妻から真顔でこう言われました。
「家族の間で『すみません』なんて言わないで!」
「そんなの『見外(ジェンワイ)』よ!」
「見外」とは、水臭い、他人行儀という意味です。家族なんだから、謝る必要なんてない。それよりも、お互いに助け合うのが当たり前。そんな彼女の辞書に深く刻まれているのが、「没関係(メイグァンシ)」という言葉です。
直訳すれば「関係ない」ですが、実際のニュアンスは「そんなの気にしなくていいよ!」、「大したことじゃない、忘れちゃいな!」という、底抜けに明るい許しです。
喧嘩の火種になりそうな僕の小さなドジも、彼女の「没関係!」の一言で、文字通り宇宙の彼方へ吹き飛ばされます。過去をいつまでも引きずらず、一瞬で「ゼロ」に戻す。この言葉の潔さに、僕は10年間で何度、心の重荷を下ろしてもらったか分かりません。

ちなみに、「ありがとう」も、家族の中では言わないとか・・・・・・。日本では「親しき中にも礼儀あり」の精神が浸透していますが、中国では「(家族なんだから)そんなの当たり前」の文化が浸透しています。
この文化の違い、おもしろいと思いませんか?
まとめ:言葉の壁は「心の距離」を縮めるスパイス
もちろん、文法を学び、単語を増やすことは大切です。でも、10年経って僕が気づいたのは、「完璧な翻訳」よりも「生の感情をぶつけ合うこと」の方が、ずっと深く相手に届くということです。
今では僕も、仕事帰りに急な雨に降られれば「アイヨー……」と独り言が出るようになりました。そんな僕を見て、妻は「だいぶ中国の人らしくなってきたね」と、特製の黒酢を食卓に並べながら笑います。
言葉が100%通じないからこそ、相手のトーンに耳を澄ませ、表情の微細な変化を読み取る。そんな泥臭い、でも体温の通ったやり取りの積み重ねが、僕たち夫婦の絆を、今日も少しずつ強く、しなやかにしてくれています。
あなたがもし、大切な人と「言葉の壁」にぶつかっているのなら、まずは一言、大きな声で「アイヨー!」と笑ってみるのも悪くないかもしれません。
